- 子どものいない高齢者の増加と、甥・姪が直面する新たな社会課題
- 「World Childless Week 2026 in Japan」プログラム概要
- 1日目:2026年9月14日(月) 基調講演「甥・姪に頼る/頼られるリアルと今できる備え」
- 2日目:2026年9月15日(火) 「介護休業対象外?「おじ・おばのケア」を担う甥・姪のリアルな現場と本音」
- 3日目:2026年9月16日(水) 「子どもがいない・頼れる身内が遠い…高齢期の「住まいと暮らし」を地域で支える選択肢」
- 4日目:2026年9月17日(木) 「甥や姪に想いを届け、負担を減らす「遺言」〜揉めない・困らせないために〜」
- 5日目:2026年9月18日(金) 「「お墓の後始末」を甥姪に押しつけないために〜前もって考える墓じまいとこれからの供養〜」
- 6日目:2026年9月19日(土) 「信託と後見のイイトコどりで自分と親族を守る~甥姪を法的立場にする方法~」
- 7日目:2026年9月20日(日) 「「甥・姪と歩む老後準備」総括〜家族頼みを超えて、私たちが今から始めるステップ〜」
- 参加申し込み方法と主催団体について
- 結び:安心できる老後を築くための第一歩
子どものいない高齢者の増加と、甥・姪が直面する新たな社会課題
現代の日本社会において、超単身化や未婚化の進行は顕著であり、それに伴い、子どものいないまま高齢期を迎える人々の割合が増加しています。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、生涯未婚率は今後も上昇傾向が続くとされており、これは単身世帯、ひいては子どものいない高齢者世帯の増加を意味します。このような人口構造の変化は、個人のライフスタイルに多様性をもたらす一方で、高齢期の支援体制において新たな課題を提起しています。
高齢期の生活においては、入院手続き、身体機能の低下に伴う介護のキーパーソン、あるいは人生の終焉における死後事務処理といった、多岐にわたる支援が必要となる局面が存在します。従来の社会構造では、これらの役割は主に子や配偶者が担ってきましたが、子どものいない人々の場合、最も近い血縁者である「甥(おい)・姪(めい)」へ支援要請が向かうケースが急増していることが、重要な社会課題として認識され始めています。
子どものいないおじ・おばの立場からは、「甥・姪に迷惑や負担をかけたくない」という強い思いがあることが一般的です。しかし、現在の医療・介護現場の慣行や社会制度においては、依然として「身元保証人」や「緊急連絡先」として親族の関与が強く求められる現実が存在します。さらに、日本の育児・介護休業法においては、介護休業の対象となる家族の範囲が「配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫」と定められており、甥・姪は含まれていません。この制度の谷間(ギャップ)は、おじ・おばのケアを担う甥・姪に、仕事と介護の両立という構造的な負担を強いる要因となっています。これにより、介護離職やキャリアの中断といった問題も顕在化しており、個人の生活だけでなく、社会全体の労働力供給にも影響を及ぼす可能性があります。
一般社団法人WINK(代表理事:朝生容子)は、このような社会課題に対し、9月第3週に設定されている「World Childless Week 日本版」に合わせて、オンラインイベント「World Childless Week 2026 in Japan」を開催します。本イベントは、単に不安を煽るのではなく、現状の実態を客観的に「知り(認知促進)」、それに基づいて具体的な法的・制度的「備え(行動)」へと繋げることを目的としています。当事者のリアルな声と専門家の知見を結集し、親族だけに負担を委ねることなく、地域や公的制度・サービスをどう組み合わせて安心の老後を設計するかを探る、7日間にわたる集中的な学びの機会を提供します。
「World Childless Week 2026 in Japan」プログラム概要
本イベントは、2026年9月14日(月)から9月20日(日)までの7日間、Zoomによるオンライン形式で配信されます。各日異なるテーマが設定されており、多角的な視点から子どものいない人の老後準備について深く考察します。
1日目:2026年9月14日(月) 基調講演「甥・姪に頼る/頼られるリアルと今できる備え」
イベント初日は、株式会社日本総合研究所 調査部主任研究員の岡元真希子氏による基調講演が行われます。講演では、子どものいない高齢者が入院や介護、死後対応といった場面で、具体的にどのような時に甥・姪へ支援要請が届くのかを、推計データや親族の定義を整理しつつ解説します。
日本社会の高齢化と核家族化、さらに地域コミュニティの希薄化が進む中で、従来の大家族制度を前提とした親族間の相互扶助機能は変容しつつあります。しかし、医療現場や行政手続きにおいては、依然として「身元保証人」や「キーパーソン」として親族の存在が慣習的に求められることが少なくありません。子どものいない人々にとって、配偶者がいない場合、最も近い血縁者である甥・姪がその役割を期待されることは、現在の社会構造においては自然な流れとも言えます。岡元氏は、そうした実態を客観的なデータに基づいて示し、親族の範囲に関する法的定義や、支援要請が届く具体的な場面(例えば、手術同意、施設入所契約、相続手続きなど)について詳述します。そして、おじ・おばと甥・姪双方の負担を軽減するために「今できること」として、自身の意思を明確にするエンディングノートの作成、医療に関する事前指示書(リビングウィル)の作成、任意代理契約の検討といった、具体的な備えの選択肢について専門的な視点から解説します。これにより、参加者は問題の全体像を把握し、自身の状況に合わせた具体的な行動を考える第一歩とすることが期待されます。
2日目:2026年9月15日(火) 「介護休業対象外?「おじ・おばのケア」を担う甥・姪のリアルな現場と本音」
2日目は、帝京大学短期大学現代ビジネス学科教授であり長野大学客員教授でもある加藤小也香氏が登壇し、制度の隙間で甥・姪が直面する介護・支援の現実について語ります。加藤氏自身も当事者として、おじ・おばのケアを担う中で経験したリアルな現場と本音を共有します。
現行の育児・介護休業法では、介護休業の対象となる家族の範囲が「配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫」と明確に定められており、甥・姪は含まれていません。この法的規定により、甥・姪がおじ・おばの介護を担う場合、会社を休むための法的な保障がなく、仕事と介護の両立に大きな困難を伴うことが多々あります。これは、子どものいない高齢者が増加する現代において、社会制度が実態に追いついていない典型的な例と言えるでしょう。この制度の谷間は、介護を担う甥・姪の離職、キャリアの中断、経済的困窮といった具体的な問題を引き起こす可能性があります。また、介護休業を利用できないことで、精神的な負担も増大し、心身の健康を損なうリスクも指摘されています。
加藤氏の講演では、こうした制度の谷間で生じる具体的な課題や、精神的・経済的な負担、そして周囲の理解の欠如といった、知られていない実態が当事者の視点から明らかにされます。当事者の視点から、おじ・おばと甥・姪双方が追い詰められないための視点や、社会全体でこの課題を認識し、介護休業制度の対象範囲拡大や、企業における独自の介護支援制度の整備など、解決策を模索する重要性について深く考察する機会となるでしょう。また、現状で甥・姪が介護を担う場合の課題解決策として、有給休暇の活用、時短勤務、企業の独自制度、そして公的介護サービスの積極的な活用などについても言及がなされると予想されます。
3日目:2026年9月16日(水) 「子どもがいない・頼れる身内が遠い…高齢期の「住まいと暮らし」を地域で支える選択肢」
3日目には、豊島区社会福祉協議会 地域福祉課長の小林純子氏が登壇し、子どもがいない、あるいは頼れる身内が遠方に住んでいるといった状況の高齢者が、施設入所・入院契約、手術時の医療同意などにどう備えるべきかについて、地域で支える選択肢を提示します。
高齢期の「住まいと暮らし」におけるリスクは多岐にわたります。認知症などにより判断能力が低下した場合の契約能力の喪失、悪質な詐欺被害への脆弱性、そして孤独死のリスクなどが挙げられます。これらのリスクに対して、親族の関与が強く求められる場面は少なくありません。小林氏は、豊島区社会福祉協議会の取り組み事例を通じて、家族だけに頼らない「地域・公的サービスの活用術」を具体的に紹介します。例えば、成年後見制度の利用、見守り契約、財産管理委任契約、死後事務委任契約など、多様な契約による備えが考えられます。また、地域包括支援センターの具体的な機能(総合相談支援、権利擁護、介護予防ケアマネジメントなど)や、民生委員による支援、あるいはNPO法人などが提供する多様な生活支援サービスについても詳述されます。これらのサービスを適切に組み合わせることで、万が一の事態に備え、住み慣れた地域で安心して暮らし続けるための具体的な方策を探ります。小林氏の講演は、地域社会が提供する資源を最大限に活用し、個人の尊厳を守りながら老後を設計するための実践的なヒントとなるだけでなく、「地域共生社会」の実現に向けた全国的な動きとして、その重要性を再認識する機会となるでしょう。
4日目:2026年9月17日(木) 「甥や姪に想いを届け、負担を減らす「遺言」〜揉めない・困らせないために〜」
4日目は、一般社団法人WINK理事であり行政書士である山下マリ氏が、遺言の重要性について解説します。遺された財産をどうしたいのか、自分の意思を明確に表すための遺言は、単なる財産分与の指示に留まらず、自分が亡くなった後の手続きを担う甥・姪たちの負担を減らすための「気づかい」の手段ともなり得ます。
遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言といった種類があり、それぞれに作成方法や法的効力、費用、メリット・デメリットが存在します。子どものいない人々にとって、遺言は自身の意思を確実に実現させるための特に重要なツールです。遺言がない場合、法定相続分に従って財産が分配されることになり、民法上、甥・姪は通常、兄弟姉妹が死亡している場合に代襲相続人として相続権を有します。しかし、遺言がないと、他の親族との間で複雑な遺産分割協議が必要となり、手続きの長期化や「争族」に発展するリスクが高まります。これは、遺された甥・姪にとって精神的、時間的、経済的に大きな負担となります。山下氏は、そうした「揉めない・困らせない」ための遺言の書き方、すなわち、財産の詳細な指定だけでなく、感謝の気持ちやメッセージを添える「付言事項」の活用、遺言執行者の指定、遺留分への配慮といった具体的な工夫について詳しくアドバイスします。遺言書の作成は、自身の人生の終焉を見据え、大切な人たちへの最後の贈り物となるでしょう。
5日目:2026年9月18日(金) 「「お墓の後始末」を甥姪に押しつけないために〜前もって考える墓じまいとこれからの供養〜」
5日目は、株式会社彩プロダクツ常務取締役の大西素子氏が、子どものいない人にとって頭の痛い課題である、代々のお墓管理や墓じまいについて解説します。甥・姪に負担を残さず、自分にとっても納得のいく墓じまいや供養の具体的な進め方について、実践的な情報が提供されます。
現代社会では、少子化や核家族化、そしてライフスタイルの多様化に伴い、「墓じまい」を選択する家庭が増加しています。お墓の承継者がいない場合、無縁仏となるリスクや、管理費の問題、遠隔地にあるお墓の維持管理の困難さなど、様々な課題が生じます。大西氏は、墓じまいの具体的な手続きについて、そのステップを詳細に説明します。具体的には、既存の墓地の管理者(寺院や霊園)への相談と離檀手続き、改葬許可申請書の作成と提出、遺骨の取り出し、そして新しい供養先の選定などが含まれます。新しい供養の選択肢としては、永代供養墓、樹木葬、納骨堂、海洋散骨、手元供養などがあり、それぞれに特徴、費用、メリット・デメリットが存在します。講演では、これらの供養形態について詳しく解説し、自身の価値観や希望に合った供養方法を見つけるためのヒントを提供します。また、生前に自身の供養方法を決定し、その意思を明確にしておくことの重要性についても強調します。これは、エンディングノートへの記載や死後事務委任契約の締結を通じて実現可能です。これにより、甥・姪に「お墓の後始末」という重荷を押しつけることなく、自身の望む形で終焉を迎えるための具体的な道筋が見えてくるでしょう。
6日目:2026年9月19日(土) 「信託と後見のイイトコどりで自分と親族を守る~甥姪を法的立場にする方法~」
6日目は、協同組合親愛トラスト代表であり行政書士である松尾陽子氏が、信託と成年後見制度を効果的に使い分ける方法について解説します。自身でできることは最大限に行いつつ、将来的に判断能力が低下した場合に備え、甥・姪を法的な立場で支援者に指名するための具体的な方法を探ります。
子どものいない人々にとって、自身の判断能力が低下した場合に備える手段は特に重要です。成年後見制度は、法定後見と任意後見に大別され、本人の財産管理や身上監護を支援する制度です。法定後見は既に判断能力が低下している場合に家庭裁判所が後見人を選任するのに対し、任意後見は本人が元気なうちに将来の支援者(任意後見人)とその支援内容を契約で定めておく制度です。一方、家族信託(民事信託)は、特定の財産(不動産、預貯金など)を信頼できる家族(受託者)に託し、本人の目的(受益者)のために管理・運用してもらう制度であり、柔軟な財産管理が可能です。
松尾氏は、これらの制度の概要、メリット、デメリット、そしてそれぞれの制度がどのような状況で有効であるかを具体的に説明します。成年後見制度のメリットとしては、本人の保護が法的に担保されること、財産管理の透明性が確保されることが挙げられますが、デメリットとしては、家庭裁判所の関与が必須であり、一度開始すると柔軟な財産運用が難しい点や、専門職への報酬が発生する点があります。家族信託のメリットとしては、財産管理の柔軟性が高く、遺言代用機能を持つため複数世代にわたる資産承継も可能である点が挙げられますが、デメリットとしては、契約内容が複雑になりやすく、専門知識が必要となる点や、初期費用が発生する点があります。
「イイトコどり」とは具体的にどういうことか、例えば、判断能力があるうちは家族信託で柔軟に財産管理を行い、判断能力が低下した際には任意後見契約を発動させる、といった制度の連携の可能性について専門的に解説します。これにより、自身のライフステージや財産状況に応じた最適な法的備えを構築するための実践的な知識が提供されるでしょう。甥・姪を法的立場にする方法として、任意後見人や信託の受託者に指名する際の留意点、そして弁護士、司法書士、行政書士といった専門家との連携の重要性についても言及がなされると予想されます。
7日目:2026年9月20日(日) 「「甥・姪と歩む老後準備」総括〜家族頼みを超えて、私たちが今から始めるステップ〜」
最終日となる7日目は、一般社団法人WINKの朝生容子代表理事と山下マリ理事をファシリテーターに迎え、1週間の学びを総括します。これまでの講演で明らかになった「甥・姪をめぐるリアル」と「具体的な備え」を振り返り、参加者一人ひとりが明日から取り組めるアクションを整理します。
この総括セッションでは、子どものいない人が直面する課題が多岐にわたることを再確認し、それぞれの課題に対する解決策や備えが、単一の制度やサービスに依存するものではなく、多様な選択肢を組み合わせることで実現可能であることが強調されます。例えば、遺言、信託、成年後見制度といった法的な備えに加え、地域社会のサポート、公的サービスの活用、そして自身の意思を周囲に伝えるコミュニケーションの重要性など、多角的な視点からのアプローチが議論されます。また、このセッションでは、参加者が個々にアクションプランを策定する際の具体的な視点として、情報収集の重要性、専門家(弁護士、司法書士、行政書士など)への相談、エンディングノートの具体的な作成方法、そして甥・姪を含む関係者との対話の機会を設けることなどが提示されるでしょう。家族頼みの限界を超え、社会全体で子どものいない人々の老後を支えるための意識改革や制度改善への提言も行われるかもしれません。参加者は、この1週間で得た知識と洞察を基に、自身の「老後準備」計画を具体化するための明確なステップを見出すことができるでしょう。
参加申し込み方法と主催団体について
「World Childless Week 2026 in Japan」への参加は、Zoomによるオンライン配信となります。事前の申し込みが必要ですが、一度お申し込みいただくと、すべての回にご参加いただけます。また、参加の有無にかかわらず、お申し込みされた方には、後日録画が配信されるため、ご自身の都合の良い時間に視聴することも可能です。
-
参加費用: 2,500円(1週間通し・録画視聴込み)
-
申込方法: 以下のPeatixサイトからお申し込みください。
World Childless Week 2026 in Japan 参加申込 -
申込期限: 2026年9月21日(月) 21:00
主催:一般社団法人WINK(Wellbeing Institute for No Kids)
本イベントを主催する一般社団法人WINKは、子どものいない女性やカップルが、互いに繋がり、学び合い、自分らしいキャリアや生き方を選択・実現できるよう支援する団体です。イベント開催、コミュニティ運営、情報発信を通じて、子どものいない人が安心して暮らせる社会の実現を目指しています。
公式WEBサイト:
結び:安心できる老後を築くための第一歩
子どものいない人々が安心して老後を迎えるためには、個人の意思決定と、それを支える社会的な枠組みの両方が不可欠です。今回の「World Childless Week 2026 in Japan」は、甥・姪への負担を軽減しつつ、自身の尊厳を保ちながら、多様な選択肢を検討するための貴重な機会を提供します。各分野の専門家や当事者の声に耳を傾け、具体的な制度やサービスについて学ぶことは、自身の未来を能動的に設計するための重要な第一歩となるでしょう。本イベントが、子どものいない人々の老後準備に関する社会的な議論を深め、よりインクルーシブ(包摂的)な社会の実現に貢献することを期待します。


コメント